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zoom RSS 『三越左千夫少年詩賞の二十年』序章B「わたしの十冊」

<<   作成日時 : 2016/12/13 11:03   >>

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『三越左千夫少年詩賞の二十年』序章B「わたしの十冊」
                 佐藤重男
 □
三越左千夫少年詩賞の二十年とはいったいなんだったのか、そのことを端的に物語っているものがあります。
雑誌『日本児童文学』2016年1・2月号の特集記事「少年詩・童謡の今」の中の、《鼎談》「少年詩の豊かな拡がり」に参加した三人がそれぞれに、この十五年のあいだに発行された少年詩・童謡集から特に印象に残ったものを掲げているのがそれです。
この三人(=海沼松世、菊永謙、はたちよしこ)、は少年詩・童謡の分野で長らく、詩作や評論の両分野で活躍してきた人たちです。その三人が「2001年〜2015年印象に残った詩集10冊」としてあげたのは、どんな詩集でしょうか。

海沼松世・選…
高木あき子『どこかいいところ』理論社
◎間中ケイ子『猫町五十四番地』てらいんく
宇里直子『兎の散歩者』幻冬舎ルネッサンス
小林雅子『青銅の洗面器』四季の森社
山崎るり子『雲売りがきたよっ』思潮社
◎檜きみこ『クケンナガヤ』私家版
高橋忠治『定本高橋忠治全詩集』小峰書店
加藤丈夫『仙人』四季の森社
江本あきこ『三日月のひと』てらいんく
杉本深由起『ひかりあつめて』小学館

菊永謙・選…
◎海沼松世『空の入口』らくだ出版
田代しゅうじ『野にある神様』てらいんく
◎いとうゆうこ『おひさまのパレット』てらいんく
◎間中ケイ子『猫町五十四番地』てらいんく
はたちよしこ『いますぐがいい』長崎出版
宇里直子『兎の散歩者』幻冬舎ルネッサンス
山中利子『遠くて近いものたち』てらいんく
三谷惠子『虹のかけら』てらいんく
岩佐敏子『ふしぎらんど』四季の森社
◎清水ひさし『かなぶん』四季の森社

はたちよしこ・選…
◎島村木綿子『森のたまご』銀の鈴社
◎菊永謙『原っぱの虹』いしずえ
◎間中ケイ子『猫町五十四番地』てらいんく
◎杉本深由起『漢字のかんじ』銀の鈴社
白根厚子『わたしの記憶』詩人会議出版
山本なおこ『ねーからはーからごんぼのはしまで』らくだ出版
◎檜きみこ『クケンナガヤ』私家版
武鹿悦子『星』岩崎書店
◎清水ひさし『かなぶん』四季の森社
◎西沢杏子『虫の恋文』花神社

 □
それぞれの詩集・童謡集のタイトルの前に◎がついているものは、三人が挙げたもののうち、三越左千夫少年詩賞に選ばれた作品です。重複しますが、分かりやすいように、その作品だけを抜き出してみます。

 □
海沼松世…
◎間中ケイ子『猫町五十四番地』てらいんく
◎檜きみこ『クケンナガヤ』私家版

菊永謙…
◎海沼松世『空の入口』らくだ出版
◎いとうゆうこ『おひさまのパレット』てらいんく
◎間中ケイ子『猫町五十四番地』てらいんく
◎清水ひさし『かなぶん』四季の森社

はたちよしこ…
◎島村木綿子『森のたまご』銀の鈴社
◎菊永謙『原っぱの虹』いしずえ
◎間中ケイ子『猫町五十四番地』てらいんく
◎杉本深由起『漢字のかんじ』銀の鈴社
◎檜きみこ『クケンナガヤ』私家版
◎清水ひさし『かなぶん』四季の森社
◎西沢杏子『虫の恋文』花神社

こうしてみると、三人がこの十五年のあいだに発行された詩集・童謡集のなかで印象に残ったものとしてあげた詩集のうち、三越左千夫少年詩賞を受賞した少年詩・童謡集は、海沼は2冊、菊永は4冊、はたちは7冊です
かなりのバラつきが見られます。
また、三人が選んだもののうち、共通していて、しかも三越左千夫少年詩賞を受賞したのは、ただ一つ、間中ケイ子『猫町五十四番地』(てらいんく 2007)だけです。
(檜きみこ『クケンナガヤ』(私家版 2013)、清水ひさし『かなぶん』(四季の森社 2013)は、二人が選んでいる。)
なお、『猫町五十四番地』は、第48回日本児童文学者協会賞(2008)を受賞しています。

 □
このように、雑誌『日本児童文学』2016年1・2月号の特集記事「少年詩・童謡の今」の中の、《鼎談》「少年詩の豊かな拡がり」に参加した三人が選んだものと、二十年のあいだに選ばれた三越左千夫少年詩賞を受賞した作品のあいだに「ズレ」があるのは、やはり「同時代性」というものが作用している、と考えていいのかも知れません。
三越左千夫少年詩賞は、五名の選考委員によって、前年の一年間に発行された少年詩・童謡集の中から選ばれます。日本児童文学者協会に寄せられたものの中から、各選考委員が「候補作」を選び、選考委員会当日(例年、四月)、その候補作すべてを対象に議論し、最後に投票によって受賞作を決定していく、というものです。
そうしてみると、一年間という短いスバーンと、十五年間という長いスバーンで対象を見たとき、選考の「基準」というものが違って当然でしょうし、三越左千夫少年詩賞は、まだ発展途上にある書き手を励まし称えるもの、という設けられた趣旨も考慮されるべきでしょう。
その上で、わたしたちは、「時代という物差し」に耐え得るものを「普遍的な」ものとして認めることになります。
そういう意味では、この十五年間に出版された膨大な数(注1)の少年詩・童謡集のなかから、「2001年〜2015年印象に残った詩集10冊」がそれぞれによって選ばれ、さらには、三人が共通して挙げた一冊を「普遍的な価値を持つ」と言い切ってもいいのかもしれません。

(注1)この十五年間、毎年、約二十〜三十冊前後の少年詩・童謡集が発行されていると言われますから、多く見積もってこの十五年間で約四百冊もの少年詩・童謡集が発行されたことになります。参考までに、三越左千夫少年詩賞の「選考報告」で紹介されている各年の選考対象数と最終候補数を掲げておきます。(発行年、対象数、候補数の順)
1996  21―6
1997  28―7
1998  18―6
1999  24―5
2000  30―10
2001  31―5
2002  27―5
2003  16―6
2004  30―7
2005  30―9
2006  34―10
2007  28―6
2008  27―8
2009  31―6
2010  28―9
2011  21―5
2012  32―5
2013  29―6
2014  27―5
2015  25―5

計  510―131

2001〜2015年の十五年間では、389―97となりますから、世に言われている数字に近いものになっています。

 □
今後予定している「本論」では、少なくとも、候補作131冊(受賞作も含む)にはすべて目を通してみたい、そう思っていますが、十年、二十年前の詩集が手に入るかどうか、少々心配しているところです。
いずれにしろ、「三越左千夫少年詩賞の二十年」とは、未完の可能性への期待としての軌跡、といってもいいでしょう。そのことに焦点を当てて、これからの考察を進めていくことになると考えています。
どうぞ、「本論」をご期待下さい。

                ―この項 完―


2016.12.13



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内 容 ニックネーム/日時
少年詩を読むのが好きですが、ネットで調べてもヒット数が少なく、このブログの存在が嬉しいです。佐藤様御自身も少年詩をお書きになっていらっしゃるのでしょうか。是非アップして下さい!!
やまと
2017/03/06 18:04

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