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zoom RSS 少年詩時評「音上郁子の少年詩」

<<   作成日時 : 2017/03/20 10:27   >>

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少年詩時評「音上郁子の少年詩」
          佐藤重男
 □
詩集『その日はね』(音上郁子 新風社 1999.11)を読みました。
正しくは、読み返した、というべきなのですが。
というのも、論考『三越左千夫少年詩賞の二十年』の準備を進めているなか、各年の選考委員会の「選考経過報告」を検証する作業を進めており、第四回(2000年)について調べているうちに、最終候補として残った、詩集『その日はね』を再読する必要に迫られたのでした。
実は、第四回の受賞作は、詩集『その日はね』に決まりかけていたのですが、著者の音上郁子が急逝しために、贈賞が見送られるという事情があったことが、改めて「選考経過報告」を読み直すなかで判明しました。
それはともかく、読み直してみて、驚きました。
そのことについて、以下、述べたいと思います。

 □
改めて、詩集『その日はね』を読み直してみて、大人が子どもに向かって詩を書く意味、それがわかった気がします。
それは、「ここに、きみを見ている人が、きみのことをわかってくれる人が、ちゃんといるよ」という徴なのだ、と。ありきたりかも知れませんが、「あなたは生きていく価値がある」「あなたはあなたのままでいい」というメッセージを発する、「自己肯定」を共有する、ということだろうと思います。
そして、それは、単なる思いとして内に秘めておくのではなく、つまり、「思っている」、それも大切、だけれど、ちゃんと子どもに見えるかたちであったなら、もっと子どもたちは実感できるだろう、誰かが思っていてくれる、ということを…その一つの手段として、ことばで伝えてあげる必要があるのだ、ということなのではないでしょうか。
「母親からの贈物―音上郁子のこどもの詩について」と題する「あとがき」のなかで、中上哲夫が「子どもたちに対する深い愛情」「地球にあまねく降り注ぎ、地中深くしみこむやさしい慈雨」と書いています。たしかにその通り、異論はありません。わたしは、そのことに加えて、作者の人間としての意思表示、というか、詩人として、人間としての矜持というか、尊厳のようなもの、つまり、愛情の根源のようなものを感じないわけにはいかないのです。
その「あとがき」のなかに、「長いこと大人の詩を書いてきて、そうした詩を集めた詩集をすでに三冊出している。それが、ここ十年ほど、大人の詩は書かないで、もっぱら子どもの詩を書くようになった」とあります。
なぜ、音上は、少年詩を書くようになったのでしょうか。
音上にとって、「愛情」とは、可愛いと思う、ということではなく、愛おしいとう感情を生むもの、つまり、「私にはないものをあなたは持っている」という感覚的な親しみ、驚きの感覚であり、それを少年詩を書くことで発見したのではないでしょうか。
そのことを、詩集『その日はね』に収められている作品の中から拾ってみようと思います。
 
 □

 どんなに小さな子どもだって     音上郁子

どんなに小さな子どもだって
ひとりで空を見たい時がある
どんなに小さな子どもだって
ひとりで知らない道を歩きたい時がある

風が耳もとをかすめる
帽子ほどの影法師だけがついてくる
どこまでも続く道の不安

どんなに小さな子どもだって
夜 ひとりで泣きたい時がある



            詩集『その日はね』新風舎 1999.9 

 □
音上の作品については、この先、「三越左千夫初年詩賞の二十年」のなかで、詳しく考察する予定です。どうぞご期待下さい。
なお、作品「どんなに小さな子どもだって」の全文引用にあたり、著者・出版社の許諾をもらっていませんが、@出典先を明示していること、A論考への引用であることの二点をもって了承していただければ、と思います。
引用にあたっては、誤字・脱字などのないように努めましたが、何かお気づきの点がありましたらお知らせください。

                ―この項 完―
2017.3.20



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