少年詩2010

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zoom RSS 年刊童謡詩集「こどものうた 2017」を読む

<<   作成日時 : 2017/04/14 10:09   >>

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『こどものうた 2017』を読む
          佐藤重男
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年刊童謡詩集『こどものうた 2017』(日本童謡協会編 2017.1.20)を読みました。
81編の作品が収められています。
すべての作品についてコメントすることは出来そうにもありませんので、気になった作品について見ていくことにします。

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「原っぱのおもしろクイズ」浅田真知
身近な自然が失われていくなか、「植物なのに 動物みたいな名前」の草花を目にする機会はもちろん、それを子どもたちに伝えていくこと自体も難しくなりつつあります。
「ねこじゃらし」や「からすうり」はその姿から想像がつきますが、「うまごやし」など、いったいどんなものか想像もつかないのではないでしょうか。草花を使った遊びも伝えていきたいですね。

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「はんぶんこ」伊沢明子
おまんじゅうとせんべい。どちらかというと、ふたつに割るのは、せんべいのほうが難しいかも知れません。とくに硬いものは、まっぷたつ、というわけにはいかないですよね。
「こっちがおっきいよ」と言い合いになるのもまた、楽しみの一つでは? ですから、まんじゅうやせんべいを半分こにするときは、手を使いましょう。(なんだって、相手の方が大きくみえますからね)

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「おいしい音」井上灯美子
「音」にも味がついている、…せんべいやたくあんを食べるとよくわかります。それに、ほら、うめぼしを食べたでしょ! ちゃんと聞こえてますよ。

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「走れ、秋風」岩原陽子
「秋風が」「突っ走る」/「ススキの穂先が」「おじぎしてる」…どれも、風景が目に浮かびます。ラスト、「雲の羊を追いかける」には、発見とおどろきがあります。まねのできない、鮮やかな表現を羨ましく思います。

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「かかとくんの せのび」織江りょう
ふだん注目されることのない「かかと」を主人公に抜擢したところが、面白いですね。なんといっても、「かかとくんの/きもち/じめん から/なんセンチ?」の発想がユニークで、ナンセンスを超えた域に達しているのでは…。

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「蝉の羽に地図がある」熊谷本郷
ミンミンゼミの羽のあの網模様を「地図」と見た、その感性に脱帽です。そこに「段々畑」が描かれているなど、言い過ぎかも知れませんが「哲学」的なものすら感じます。
どんな曲が付くのか、楽しみです。

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「電話がない」小泉明子
携帯電話に振り回される、昨今の世相をドタバタ劇風に見立てたところが面白いですね。「歩きスマホ」なんて、悪口を言われるのですから、ケイタイも姿を隠したくなるに違いありません。

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「ないしょだよ」鈴木敬子
おもしろい! 不思議そうに見ているおかあさんもそうですが、窓ガラスについた「小さなあと」が、外の様子を気にしてみている「ぼく」のおでこのあとだなんて。跡がつくほどそんなにいっしょうけんめい空模様を気にする、なんて、豊かな感性の持ち主なんでしょう。

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「りんごとおるすばん」高木あきこ
おかあさんが返ってくるまでのあいだ、りんごと向き合ってお留守番をしている「わたし」は、歌って、笑って、とりんごに話しかけます。でも、ほんとうは心細いのかも知れません。小さな子どもの大きな経験を、やさしく描いていて、楽しい作品です。どんな曲が付くのでしょうか。

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「おばけも病気になるのかな」滝波万理子
どうやらおばけも病気になるようです。でも、大丈夫。墓場のすみに夜だけひらく「おばけ専門」の病院があるようですから。
「足が痛い」といってお医者さん(もちろんお化け)を困らせるおばけも多いようです(とは、佐藤の勝手な想像…)

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「はじめは こうして」竹野由美
弾むような七五調のリズムに誘われて、声に出して読んでいると、なんだかとても楽しくなってしまいます。「ちいさな せんせい あかちゃん」と言いたくなる気持ち、よくわかります。

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「草と綱引き」柘植愛子
「草とり」も、子どもたちにぜひ経験してほしいことの一つかもしれません。小さな雑草の根っこが意外に生えひろがっていたり、引き抜いてみたらびっくりするほど短かったり、と…そんな発見につながるのではないでしょうか。

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「ながれ星」冨岡みち
いろんな色のしっぽを持つ流れ星。そんななかでも「金のしっぽ」の流れ星は別格。誰にも秘密の「おねがい」とは何だったのでしょうか。

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「だから たべない」冨永佳与子
「ブロッコリー」や「カリフラワー」を食べないのには、訳があるのですね。あれは、動物たちが暮らしている「もり」だと言われると、なるほど見守っていてあげたくなります。
でも、どちらも、栄養豊富。ちょこっとかじってみてはいけませんか?

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「ぼくらのくじら山」二瓶みち子
子どもたちにとって、遊び場は、「待っていてくれる」もの。そこに行けば、必ず誰かが「いる」のです。子どもたちは、そんな遊び場にあるものに、親しみを込めて名付けをするのが習いになっています。「くじら山」のように。

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「ふわり キラリ」鼻和多恵子
この作品の際(きわ)は、各連のおしまいにあるのではないでしょうか。「ゆき」も「しもばしら」も、それはそれは儚いものですが、「むねの なかに」「むねの おくで」、いつまでも、「ふわり」と、そして「キラリ」とあり続けるのに違いありません。

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「鳩のおにごっこ」林みやこ
この作品は、読み方によっては、ユーモラスにも、シリアスにも感じられます。「ないている」は、「鳴いている」とも「泣いている」ともとれます。「だあれが鬼か わからない」は、繰り返されることで、悲哀さえ感じられますが、それは、きっと「大人の読み」にすぎないのかも知れません。

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「かさをひらいたら」福山京子
四行、四連の可愛らしい作品で、ラスト、おまけの「くるくる くるくる」が、かさの気持ちを代弁してくれているようで、作品世界に奥行きを持たせているのではないでしょうか。
それぞれの傘の色として、「あか」「きいろ」「あお」「しろ」が出てきますが、先日、本ブログでも紹介したように、「あか」「あお」「しろ」は、子どもたちが好きな色のベストテンに入っていますし、「あお」はトップにランクインしています。(「小学生の好きな色」学研教育総合研究所 2015年調査 より)

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「さすらいのブランコ」間部香代 
いやあ、おもしろいですね。ファンタジーというよりは、ナンセンス詩の部類に入るのでしょうが、そもそも、得体の知れないブランコ(外国人ではありません。遊具のぶらんこ、です)が勝手によその家に入ってくること自体が、もう常識の枠をはみ出しているというのに、たたみかけるように、羊羹を手土産に持ってきた、というのですから、驚くほかありません。しかも、ブランコには乗せないで、部屋で横になってごろごろしているだけ、という在り様。そして、いつのまにかブランコはいなくなり、残された羊羹を伐ってみると、…。オチはみなさんご自身でご確認を。

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「わたし」宮中雲子
作品「わたし」は、曲を付けなくても、詩として十分楽しめます。「わたしを わたしを/だいじにするの」「だれにもまけない/わたしにするの」などからは、語気の強い作品という印象を持たされるだけに、どんな曲が付けられるのか、…楽しみです。

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「木馬よありがとう」三輪アイ子
もう用をなさなくなり捨てられ、朽ち果てた木馬。良き遊び相手だっただけに、なぜ捨てられてしまったのか、と納得のいかない「ぼく」。「成長」とはたとえて見れば、古い入れものを脱ぎ捨てて育っていく、いわば「脱皮」。古い自分を捨てることは「祝福されるべき」ことなのかも知れませんが、…もし、木馬の視点から書かれたら、どんな作品としてわたしたちの前に提示されることでしょう。

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「カップラーメンのうた」山中利子
カップラーメンに題材をとった童謡が登場すること自体が、おもしろいと感じました。「わごむをかためてつくったみたい」という出だしに、社会批判というか、皮肉を感じるのは、大人の感性かも知れません。「さあさあ お食べ」とせかされる子どもたち、どんな反応を示すのでしょうか。

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「ころん ころん むじな」吉田房子
ことば遊びに近い作品です。でも、ちゃんとストーリ性があって、「ころん ころん」と読んでいくうちに、オチにたどりつきます。いまの子どもたちには「むじな」ってどんな動物かわからないかも知れませんが、そんなことなどおかまいなしに、「ころん ころん」と唱えて遊んでくれるのではないでしょうか。小学生の子どもたちが、中原中也の詩をおもしろがって口ずさむように…。

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読み通してみての、わたしの推薦作は、「さすらいのブランコ」(間部香代 p74)です。

 さすらいのブランコ   間部香代

ブランコが うちにやってきた
ごていねいに ようかんもって
おちゃでもだそうと おもったら
おかまいなくって いわれたよ

ブランコが うちでゆれている
はなうたなんて うたいながら
すわってみようと おもったら
きょうはごめんと いわれたよ

ブランコが うちでねころんで
あくびしながら ぐうたらしてる
たいくつですかと たずねたら
たのしすぎると わらったよ

ブランコは うちにもういない
ゆうひのほうへ かえっていった
みやげのようかん きってみたら
おおきなくりが はいっていたよ
てつのにおいが ちょっとしたよ


       年刊童謡詩集「こどものうた 2017」日本童謡教会 編 2017.1

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いつものように、駆け足での寸評になってしまいしまた。また、取り上げられなかった作品が多くありましたが、取捨にあたっては、他意はありません。どうぞご了承ください。
なお、作品「さすらいのブランコ」の全文引用については、日本童謡協会に「使用のお知らせ」として事後承諾の形にはなりますが、ハガキにて連絡させていただきました。著者の間部さんには、連絡先が不明なため、使用の通知をしてありません。
また、作品からの部分引用についても、論考への引用であり、出典先を明記していますので、ご了解いただければ幸いです。

              ―この項 完―

作品や作者名などについては、誤字・脱字などのないように努めましたが、何かお気づきの点がありましたらお知らせください。

2017/4/13



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