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<<   作成日時 : 2017/07/16 13:55   >>

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詩文集『花の語るらく』を読む
          佐藤重男
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詩文集『花の語るらく』(藤井則行 能登印刷出版部 2017.5)を読みました。
31編の作品が収められています。
この詩文集『花の語るらく』は、「はる」「なつ」「あき」「ふゆ」の四つの章から構成されているのですが、「はる」「なつ」「ふゆ」の三つの章には、24編の詩が、「あき」の章には7編の散文が収められています。

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まず目次を見て、一つのことに気が付きます。それは、章のタイトル、作品のタイトルがすべて、かな(カナ)表記されていて、漢字は一つも見当たらない、ということです。
たとえば、「うめ」は、「梅」「ウメ」では、梅の実やウメボシを連想してしまいますが、「うめ」は、かな表記による見た目の「やわらかさ」、あるいは、音読するときの耳触りの心地よさといった、作者の対象に対する想いを強く印象付けてくれます。それは、使い古されたことばではありますが、「対象への慈しみ」といったらいいでしょうか。
また、「はる」の章に収められているのは、どれも、お馴染みの草木たちですが、作者の眼から見たそれではなく、かれら草木の視点で、かれらの想いが描かれている、そこに特徴があります。
こんな具合です(…の後ろは作品名)。

 そうせかさないでください…うめ
 ボク 出る!/ワタシも!…つくし
 この庭先ですよ/香を焚いているのは…ジンチョウゲ
 わたしたちの誇りよね…すみれ
 もう はちきれそう…かたくり
 たーんとおあがりってね…れんげ
 おれたちこそ/花の中の花というもんだい…つばき
 しだれ花火とござーい…しだれざくら

ですから、実は、「見られているのはわたしたち人間」、ということになるのではないでしょうか。
 
 □
そして、「なつ」の章でも、草木たちのこんな声が続きます。

 これぞぼくたちほたるぶくろの本望だ…ほたるぶくろ
 沈黙こそ金≠ナす…くちなし
 それがわたしたち自慢の七変化…あじさい
 この名前が大好きです/だって/やさしさそのものですもの…ゆり
 野辺にひっそりと咲くわたしたちの可憐さを…ひるがお
 お祝いの飾りに//どうぞご利用くださいませ…みずひき
 おれたちは太陽だ…ひまわり
 
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散文詩の「あき」の章を挟んで、「ふゆ」の章でも、その「勢い」は止まりません。

 清く/正しく/美しく…すいせん
 どんどん燃やそうぜ/真っ赤な炎を…シクラメン
 花言葉は祝福=cポインセチア
 福を呼ぶおめでたい宝石です…なんてん

こうして、わたしたちが目の当たりにするのは、漲る草木たちの「自負心」、といったらいいのではないでしょうか。わたしたちは、ややもすると、「小さきものたち」に目を向ける時、そこにあるのは謙虚さでなければならない、自我を主張することではなく、慎み深いことこそ肝要だ、と勝手に思い込んではいないでしょうか。
そうではありますまい。草木たちの、この「自負心」は、小さき・名もなきものたちの「生命力」の発揚であり、彼らの強さの証しなのだ、と思わずにはいられません。
そのことを著者は、「あとがき」で次のように書いています。

 四季折々の草木が、その時期を迎えて律儀に花を咲かせ、実を結ぶのを見ていると、なんだかいじらしく、花や実が何か話しかけているような気がしてくるのです。その「花語」に耳を傾けて訳したのが、この詩文集ですp105

わたしたち人間もまた自然の一部なのだと言い通すなら、わたしたちは、まず、隣にいる小さき草木たちのことばに耳を傾ける事、それがすべての始まりなのだ、と著者は信じている、そういうことなのだと思わずにはいられません。

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散文で書かれている「秋」の章には、7編の作品が収められていますが、どれも、その草木の謂われ、命名の経緯が忍ばせてあります。特に、作品「さざんか」は、童謡「たきび」の歌がはじめて放送されたのは、太平洋戦争開戦の翌日で、そしてわずか二日で放送禁止になってしまったことに題材をとったものですが、決して声高には語らないものの、たきびの炎と戦火の炎を二重写しにしているとも読めます。だからこそ、歴史の重さを感じさせるのではないでしょうか。

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いつものことですが、駆け足での寸評になってしまいました。
詩文集『花の語るらく』(藤井則行 能登印刷出版部 2017.5)をぜひ手に、みなさんも、「花語」に耳を傾けてみて下さい。

作品からの引用にあたっては、誤字・脱字などのないように努めましたが、何かお気づきの点がありましたらお知らせください。


2017/7/15


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