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zoom RSS 少年詩時評「童謡集を読んで」

<<   作成日時 : 2017/08/27 16:18   >>

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少年詩時評「童謡集を読んで」
                    佐藤重男
 □
いま、童謡集をまとめ読みしています。参考までにリストを掲げておきます。
 「読んで楽しい日本の童謡」中村幸弘・編著 右文書院 平成20年6月
 「言葉をかみしめて歌いたい童謡・唱歌」由井龍三 春秋社 2010.2
 「日本童謡集」与田凖一・編 ワイド版岩波文庫 岩波書店 1994.6第2刷
 *「日本の童謡 誕生から九○年の歩み」畑中圭一 平凡社 2007.6

 □
与田の「日本童謡集」は、文字通り大正・昭和の代表的な童謡作品を作者と共に記録しておく、文献的な資料として第一級のものであることは言うまでもないでしょう。
読んでいておもしろかったのは、「読んで楽しい日本の童謡」と「言葉をかみしめて歌いたい童謡・唱歌」の2冊のスタンスの違いがはっきりしていることです。
その例を北原白秋の「雨」への読みの違いから見てみましょう。

 雨     北原白秋

雨がふります。 雨がふる。
遊びにゆきたし、 傘はなし。
紅緒の木履も 緒が切れた。
 ―以下、略

 童謡の素材に雨≠ェ多いのは、どうしてなのでしょうか。//第一連二行目「遊びにゆきたし」と「傘はなし」と、意味するところは、逆接なのですが、それが、みごとに、並列の関係で並んでいます。//全連の一行めに繰り返される「雨がふります。雨がふる。」は、丁寧の助動詞「ます」を添えた表現と普通表現とを並列させています。―以下、略
(「読んで楽しい日本の童謡」中村幸弘・編著 右文書院 平成20年6月 p4-6)

 白秋の歌は女の子を主人公として、大正・昭和の「遊びにゆきたし 傘はなし」といった庶民の生活、それに加えて「紅緒の木履も緒が切れ」ていて、降り続く雨の中で友だちの所へも行けない淋しさをうたっている。//とにかく貧しい時代であった。
(「言葉をかみしめて歌いたい童謡・唱歌」由井龍三 春秋社 2010.2 p54)

 □
読み比べて見ると、この両者のアプローチの違いは一体なんだろう。そう思わされるほど、異なった印象を持たされます。
言ってしまえば、前者は「鑑賞」であり、後者は「解説・解釈」だ、ということなのかも知れませんが、それほどに白秋の童謡には、奥深いものがある、と言ってよいでしょうか。
もう一つ、両者の違いを見ておきましょう。

 黄金虫     野口雨情

黄金虫は、金持ちだ。
金蔵建てた、 蔵建てた。
飴屋で水飴、買って来た
  ―以下、略

 この「黄金虫」という童謡は、言葉の遊びを存分に取り入れて、聞いている人にも、その謎を解かせて楽しむという、実に洒落た作品です。/金持ちなのに、安い水飴を買って来た、といって、けちな奴だと、皮肉を込め、からかい、話の落ちとしているのです。
(「読んで楽しい日本の童謡」p101)

貧乏で首がまわらなくなった雨情は、//道ばたで「黄金虫」をみつけ、//自分も金持ちになって金ぐらを建て、子供たちに水飴ぐらいたやすく買ってやれる身分になりたいものだ、//雨情の発想と表現の豊かさがよく示された歌である。
(「言葉をかみしめて歌いたい童謡・唱歌」 p33-34)

 □
まあ、びっくりするほどの解釈の違い、というか、アプローチの違いが、見事としかいいようがありません。
ぜひ、この二冊の本を手に取って、その怪説≠ヤりを楽しんでみてください。
(「雨「黄金虫」の二つは、「読んで楽しい日本の童謡」から引きました。)
それから、「日本の童謡 誕生から九○年の歩み」(畑中圭一 平凡社 2007.6)は、全402頁に及ぶ論考であり、大作というか、労作です。まだ、読み始めたばかりですが、時間が掛かっても読了にたどりつこうと気持ちを引き締めているところです。
なお、「日本童謡事典」(上笙一郎・編 東京堂)も併せて図書館にリクエストしていたのですが、傷みがひどく、保存のため貸し出し中止となっているとの回答がありました。
また、童謡(評論・研究)に関心のおありの方は、次の二冊も参考になさって下さい(どちらも、図書館で借りられます)。

 「童謡論の系譜」畑中圭一 東京書籍 1990.10
 「與田凖一の戦中と戦後」本間千裕 高文堂出版社 2006.5


                 ―この項 完―

いつものことですが、作品などの引用にあたっては、誇示・脱字等のないよう努めましたが、何かお気づきの点がありましたら、お知らせください。

2017/8/27


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