少年詩2010

アクセスカウンタ

zoom RSS 同人誌『おりおん 54号』の詩編を読む

<<   作成日時 : 2016/12/31 12:39   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

同人誌『おりおん 54号』の詩編を読む 
  佐藤重男
 □
同人誌『少年詩と童謡 おりおん 54号』(織音の会 2016.11)が出ました。同人12人の詩作品26編が収められています。
(それにしても、加藤丈夫さんの作品がないのがなんとも寂しくてなりません。)
それでは、いつものように、作品を順にみていくことにします。

 □
浜野木 碧「オルゴールのことづて」「字のリサイクル」「辞書のよりみち」
オルゴール、わが家にもあったはずなのですが、はて、どこに在るのやら…。長野県の諏訪湖の畔に、たしかオルゴール博物館のようなものがあって、何度か訪れてことがありました。
作品「オルゴールのことづて」は、ラスト、「最後の しずくは/追伸」のひとことが見事です。
作品「字のリサイクル」は、「字のごみは 部首ごとに/分別しなければ いけません」といった視点のおもしろさに魅かれました。最後、「ぼく」が袋の口を縛ってしまうのですが、それは、いじわわるでもなんでもなく、言葉を大切にしている人(書き手)の矜持からくるものでは、と読みました。
わたしも、辞書にはいつもいつも助けられています。ネット検索に比べて、たしかに効率は悪いかも知れませんが、「よりみち」の楽しさはアナログではのものですね。

 □
菊池貴子「クーポン券」「抜け殻の主張」
作品「クーポン券」は、後半、「ボクが欲しい」クーポン券は…「お母さんと話す時間/プラス一時間のクーポン券」だというささやかな願いさえままならない現実。子どもの孤食は親の孤食でもあり、貧富の格差、待機児童、働き方、家族の在り方…この一年で露わになった問題を含んでいる、そんな気がします。
作品「抜け殻の主張」を読んでいると、なぜ、わたしたちはこんなにも「蝉」、特にその抜け殻に惹きつけられるのか、そんなことを考えてしまいます。

 □
小林 比呂古「ねんねこ ねんねこ ねんねこよ」「ようちえんバスとごあいさつ」
この一年、「無理心中」について考えてきました。それを未然に防ぐことが、果たして、わたしたちに出来るのだろうか、と。出来るとしたら、それは何か、と。
作品「ねんねこ ねんねこ ねんねこよ」は、そんなわたしの疑問に対していくつかの答えを用意してくれています。その一つは、「身体感覚」の大切さ、です。視覚・聴覚・臭覚・味覚…触覚もありますね。大人が子どもをおんぶ(あるいは抱っこ)するとき、子どもは、持てるすべての感覚を動員して、大人のからだや声音、そして体臭をさえかぎとっているのだと思います。自分に向かって放たれているものひとつ残らず。
わたしは、子どもの笑顔が大好きですが、寝顔はもっと好きです。

 □
しまざき ふみ「姫たけのこ」「まいまい まいたけ」「条件反射」
作品「姫たけのこ」は、途中、「一枚ずつ 着物を脱がせていくと」あたりから、何やら艶めいた世界へと誘われるようなドキドキをおぼえてしまうのですが…。「かぐや姫」ならぬ「たけのこ姫」の登場に、ほっと胸をなで降ろした次第です。「ああ 何て美味しい」のひとことに、自然への恵みに対する感謝の気持ちが読み取れます。
「作品「まいたけ まいたけ」を読んで、その名の由来に驚かされました。「このきのこ/見つけた人は 嬉しさに/思わず舞を 舞うという」だから、「まいたけ」なのだ、と。
そうだったんだ!
本ブログでも紹介しましたが、日本国内のペットのなかで1・2位を争ってきた犬と猫。
どうやら猫が1位を奪い取る勢いだそうです。
【猫派 犬派をしのぐ勢い 飼育数逆転見込み 散歩不要・少ない手間/昨年、犬は1035万匹、猫は996万匹】(2015年10月26日付朝刊) 
猫は犬に比べて飼いやすさがあるのでしょうが、なんといっても、あのプライドの高さ・神秘性が、猫派の増加につながっているのは間違いなさそうです。

 □
池田 あきつ「仲よしすずめ」「冬の日」「初夏の木の芽」
先日、わが家の狭い庭に、すずめが1羽だけ降りてきて、何やらついばみ始めました。1羽で、というのは珍しいなあ、とおもっていたら、なんと、隣の家の屋根にもう1羽がいるではありませんか。親子でしょうか、つがいなのでしょうか。作品「仲よしすずめ」を読んでいて、そんなことを思い出しました。
作品「冬の日」を読んで、この書き手は、こういう情景描写がうまいなあ、とつくづく感心させられました。風や木の葉がまるで生命(いのち)を持っているかのようにこちらに伝わってきます。「風の後ろを 追ってゆく」のラストは秀逸です。まるで、人生の一部を切り取ってきた観すらあります。
作品「初夏の木の葉」も、風と木の葉の絡みを題材に採っていて、味わいのある作品になっています。

 □
鈴木 レイ子「ません棒」「初なりの茄子」
「ません棒」を知る人は少ないかも知れません。作品を読み進めていけば、「ああ、あれか」と気が付く若い人もいるかも知れませんが、厩などで見かける、横棒のことです。たった一本の横棒なのですが、これがあると、馬や牛たちは、どうしてもそこから飛び出ることは叶わないのですね。後半、馬の「安堵の目」が、作品世界を奥深いものにしていると思います。
作品「初なりの茄子」は、家庭菜園での出来事でしょうか。収穫した三つの茄子を「牛」「猪」「豚」と見立てたところが面白いですね。カナ表記にせず、漢字を使ったところに何か意味があるようです。カナ表記では、モノになってしまいますから、漢字表記にして「神」に近い存在であることを示唆しているのかも知れません。

 □
伊藤政弘「平面のぬけがら」
作品「平面のぬけがら」は、レトリックをうまく使いこなしていて、とても面白く読みました。わたしたちは、三次元の世界に生きているわけですが、それをあえて「平面」という一次元の世界を作り出すことで、ものの本質を暴いて見せようとしている、そんなふうに感じます。平面=閉じられた空間=閉塞感にもつながるのかも知れません。
この作品も、蝉を主人公にしていますが、地下に七年、やっと世界に登場してわずか一週間余りでその生命(いのち)を閉じると言う、蝉の特異性に魅せられてのこと、といえるでしょう。「絶望の孔」というモチーフが印象に残ります。

 □
白石 はるみ「神様への手紙」
作品「神様の手紙」は、ある日とつぜん、自分から遠ざかってしまった仲よしのことで、「ぼく」が、藁にもすがる思いで「神様」に出した「手紙」。
「ぼくはもっと良い子になります」は、果たして本心なのか、話者による「皮肉」なのか…。

 □
江崎 マス子「林で空蟬と」「あめんぼ」「流れ」
作品「林で空蟬と」もまた、蝉の抜け殻に取材したものです。脱皮した蝉は、自分が脱ぎ捨てた殻の事などこれっぽっちも思う事なく短い一生を謳歌しているのですが、それもまた、一週間でしかない…抜け殻よ、周りを見渡して御覧、「自然は美しい」よ、と。
作品「あめんぼ」は、満々と水がはられた田んぼに映し出される雲。その雲に一点、何かが…。まるで、雲は、空に浮かぶ舟のように、そして、それを操るのは「あめんぼ」。
作品「流れ」は、「刻」という漢字を「とき」「こく」と読ませることで、時の流れを印象付けています。

 □
戸田 たえ子「見つけた」「粉雪の舞う深夜に」
作品「見つけた」は、保育園児の「しずくちゃん」の「あるある探検隊」録。見つけたものをなんでも触ってみるしずくちゃん。そんなしずくちゃんを高い高い空から見つめている「真っ白い雲と太陽」。
作品「粉雪の舞う深夜に」は、切り拓いた新境地をさらに押し広げていこう、という熱意を感じます。
「ひたひたひたひたひた……」も効果的ですし、「狛犬にまかれたマフラーが/ほどけぬようにむすばれていた」のラストは、何か、人知を超えた畏怖のようなものさえ感じさせます。深い所に残ることばです。

 □
水戸 育「新星」「お引っ越し」「雨」
作品「新星」は、目の付け所がおもしろいと思いました。星を見上げる人間と、人間を見守っている星との対話。
作品「お引っ越し」は、なんともユーモラスな「物語」です。クモの家族が「大きな風呂敷包みを背負って」はナンセンスの極み。また、「すこし上から目線の内容だ」は、軽やかでクスリと笑わせてくれます。
作品「雨」は、音楽でいうと、前半部分は「短調」、後半部分は「長調」と、対象的に描き分けられています。「かさでもあれば/出かけられるのにと/小鳥がつぶやく」の一節が、いかにも少年詩らしい気がします。

 □
宍倉 さとし「せいちょう」
作品「せいちょう」は、子どもならではの目線で、大人の「常識」をするりとかわしてしまう面白さを描いています。「ぼくの子どもやまごのめんどうみてね」は、いかにも現代っ子らしい一面ではありますが、でも、めんどうをみてもらうのは、じいじのほうかも、と知ったら、孫たちはどんなに驚くことでしょう。

 □
今回も、駆け足での寸評になってしまいました。作者のみなさんには、お詫びします。
また、作品からの引用にあたっては、誤字・脱字のないように努めましたが、何かお気づきの点がありましたら、ぜひ、ご一報ください。

               ―この項 完―

2016.12.31


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
同人誌『おりおん 54号』の詩編を読む 少年詩2010/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる