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<<   作成日時 : 2016/12/02 10:38   >>

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同人誌『さん 30号』の詩編を読む
  佐藤重男
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先日、「少年詩・童謡・詩論研究会」の席で、はじめて、梅里みゆきさんにお会いしたのですが、その時に、『さん 三十号・記念誌』(児童文学 さんの会 2016.10)をいただきました。
同人誌『さん 30号』に収められている詩編を中心に見ていこうと思います。

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うめさとみゆき「ギンドロの樹の下で」「雫」「跳人の鈴」
作品「ギンドロの樹の下で」の主人公の「わたし」は、陸上競技部の部員なのでしょうか。それとも、「立ち止まり/地面を見つめ」「再びわたしは 走り出す」とありますから、校内マラソン大会でのことなのかも知れません。
「風に誘われ/顔を上げると」の場面が、とても印象に残ります。
「ギンドロの樹」という呼称は、はじめて知りました。「ウラジロハコヤナギ」という別名を使わずに、ちょっと怖いような響きを持つ「ギンドロ」としたことで、「若さ=青春」という力強さや「希望」をすら連想させます。
 ◇
作品「雫」は、「水面」を「みなも」と読ませることで、出だしの「ゆらゆら」が生きているし、ラストの「あとは だまって 空をうつした」を効果的に引き立たせてくれていると感じます。
読んでいて、やわらかさと清新さに魅了されます。
 ◇
作品「跳人の鈴」は、タイトルを目にしたとき、「鈴」って何だろう、と思わされましたが、「鈴をひろえば 幸せになれる」ということなのですね。青森出身の知り合いがいますが、鈴のことを聞いたことがなかったと思います。
これからは、鈴の行方に注目して、「ねぶた祭り」を見ることにしましょう。

ところで、三つの作品すべてが、二行ずつに「小分け」されて書かれていますが、これでいい、という人もいれば、リズムがとりにくい、と首を横に振る人もいるかも知れません。
だとしても、作者にとっては、この二行が一つ一つの大切な世界であって、リズムとかなんとかいう以前の問題なのでしょう。わたしは、これでいいと思います。

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尾崎美子「みずたまり」「ゆうやけ」「ねじばな」
作品「みずたまり」は、「足あと」ではなく、「かかとだけ」としたところが、なんといっても、絶妙だと感じました。感性が豊かであることの証しではないでしょうか。また、四連目の、「空に浮かぶ積乱雲/赤いかさ」の色遣いも効果的です。ラスト、「よく 見れば/みんな さかさま」も、ユーモラスです。ただ、そのあと「おーい/そちらも/きょうは 夕立かい」と、作者が顔を出してしまっている、と受け取られかねない部分は、賛否の分かれるところかも知れません。
 ◇
作品「ゆうやけ」は、童話風の作品ですが、
一連目の「熟しきった オレンジの」
四連目の「山の峰から峰へ続く稜線は」
五連目の「背高のっぽの シルエット」
などの表現は、やや現代詩風というか、少年詩としての作りから外れているかも知れません。
ラスト、「ただいま/バスから降りた/とうさんが 言った」は、意表をつくテーマの転換があって見事だと思います。なかなかの感性だと感心しましたが、ぜひ、育てていって欲しいですね。
 ◇
作品「ねじばな」は、作品世界よりも、作者の思いが前面に出てしまっているように感じられました。出だし、砂利道の登り坂で苦労する母子。そして、砂利の下からもがいて伸びようとする「ねじばな」。母親は峠の上を見つめ、一方、娘は、「ねじばな」の存在に気付き、自転車を降りてかがみこみ、もっとよく「ねじばな」を見ようとします。そんな娘の後ろ姿から母親は何を感じ取ったのでしょうか。

「ちいさな 足あとの/かかとだけ のこして/みずたまり」(作品「みずたまり」)、「いわし雲/ひとつひとつに/熟しきった オレンジの/帽子を かぶった/子どもの行列」(作品「ゆうやけ」)、「登り坂/砂利に はばまれて/思うように 進めない/自転車」(作品「ねじばな」)のように、三つとも、「体言止め」が多用されています。
強いこだわりを感じますが、作品「ゆうやけ」では、独特の世界観のようなものが読み取れ、成功していると思います。

 □
駆け足での「寸評」になってしまい、作者には申し訳なく思います。
いずれにしろ、お二人の作品を読んで、ことばにすることで、対象を見る感覚・感性を鋭くさせることができる、そのことをわたしたちに教えてくれている、そんな気がします。

                       ―この項 完―

作品の引用にあたっては、誤字・脱字等のないよう努めましたが、何かお気づきの点がありましたらお知らせください。
 
2016.12.3

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