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<<   作成日時 : 2017/02/27 08:11   >>

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詩集『おにいちゃんの紙飛行機』を読む
  佐藤重男
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詩集『おにいちゃんの紙飛行機』(大楠翠 ジュニア・ポエム双書262 銀の鈴社 2016.11)を読みました。
作者の大楠は、「インターネット木曜手帖」でいくつか作品を読んで以来、活躍を期待していた一人です。そんなこともあって、ワクワクしながら詩集『おにいちゃんの紙飛行機』に目を通しました。順に見ていきましょう。

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作品「みずたまりの答案用紙」は、発見と驚きの二つが同居する、少年詩・童謡らしさが伝わってくる作品です。みずたまりが答案用紙で、しかも、そのみずたまりにポツリポツリと落ちる雨が輪のように広がっていく様を、答案用紙に描かれた「まる」というのですが、なんという発想の豊かさ、飛躍でしょうか。それだけに、二連目はややありふれているかな、と思わされますが、それを帳消しにしてくれていると思います。
作品「長い顔のおにいちゃん」も、わずか八行の短い作品ですが、もっと削ることで、よりいっそう切れ味のある作品に仕上がったのでは、と感じます。それにしても、「馬みたいに顔が長い」には、思わず口元が緩んでしまいました。でも、たしかに、ほかの人に言われると頭にくるでしょうね。
作品「新しい本」の、「新しい本の新しさを/確かめる」は、大楠らしい視点だと感心しました。それほど洒落た表現ではないのですが、対象に対する思いやりみたいなものが読み取れます。
それよりも何よりも、五感を総動員するという感性に圧倒されますね。見て触るだけでは収まらず、臭いまでかいでしまうというのが凄い、というか、きっとこのあと、ギュギュッと抱きしめ舐めまくったのでは、と思わずにはいられません。
作品「魔法使いの素顔」は、絵本のなかに吸いこまれていく、そんな「ぼく」の様子が見えてくる気がしてきます。「素顔を/見てみたい」という「ぼく」の好奇心こそ、大切にしたいものではないでしょうか。
作品「ぼくの手」は、素材がおもしろいだけに、「はにかんでるよ」で閉じてしまうのはもったいない、そんな気がします。
作品「母の皺」も、素材が面白いだけに、もう少し、と歯がゆい思いがしました。

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「U やさしい目をしないで」の「ぼく」はお兄ちゃんになっているようです。
このU章は、ぼくと父親との交流がモチーフになっています。
と、幼年詩と思って安心仕切って読み進むと、作品「空蝉」から、場面は一転します。
「何かをここに留めて去った/父の色褪せた面影そのもの」ということから、父親はもう、向こうの世界に逝ってしまったということがわかります。そして、「やさしい目をしないで」というタイトルに、心をザワザワさせられてしまいます。
父の写真が飾られた仏壇を前に、父の生前にあれやこれや言われながらなかなかできなかったこと、それが今ではできるようになったよ、と報告する「ぼく」に、写真の父は微笑みかけてくるというのです。「おとうさん/写真のなかで/そんなにやさしい目を/しないでください」と返すしかない「ぼく」。なんということでしょう。あまりにも切なく、やりきれない気持ちにさせられます。「やさしさ」は、時として「残酷さ」へと転化するものか、と。わたしは、そんな「ぼく」の背中に、かけてあげられる言葉を持っていません。
すこし時間をかけて、わたし自身が感じたことを整理してみたいと思います。
作品「薄氷の仕業」は、抒情あふれる作品で、これを読んで、少し救われた気がしました。

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V章「心のなかは」に収められている十五編は、幼児詩・幼年詩というよりは、作品のつくり、視線の先にあるものからすると、かなり年齢の高い読者を対象にしていると思われます。
作品「阿修羅像のように」は、ちょっとしたブラックユーモアとして読めるのですが、
そうではなく、「揉みくちゃにされた/カマキリが/阿修羅像のように/手足を折り曲げて現れた」という、作者・大楠の茶目っ気ぶりを楽しめばいいのかな、とも思います。ここに漂っている独特のセンスをぜひ、大事に育てて行って欲しい、そう願わずにはいられません。
それにしても、読むほどに楽しくなる詩です。
このカマキリ。「洗い立てのポロシャツ」の中にいたということは、洗濯機で揉みくちゃにされ、とうにあの世に逝ってしまっていた、ということになります。それなのに、こうして読んでいると、まるで生きているように思えてくるのですから不思議です。だから、詩はおもしろい、つくづくそう思います。
そのほか、作品「落ち葉の貼り絵」を面白く読みました。小さな小さな物語を読んでいるようで、ここまで引きずってきた、作品「やさしい目をしないで」を読んだあとのショックから立ち直れそうな、そんな予感がします。


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一冊の詩集としてみたとき、幼児詩・幼年詩・高学年向け詩、などなどが織り込まれているのですが、なんといっても、作品「やさしい目をしないで」が全て、という印象を強くします。たとえが適切かどうかわかりませんが、この一編によって、「卓袱台がひっくり返された」そんな強烈なインパクトを受けたのでした。
わたしにとって、自分の既成概念を打ち壊された感がありますが、そういう意味でもこの詩集『おにいちゃんの紙飛行機』に出会えてよかった、そう思っています。
もっともっと伸びていい書き手です。ぜひ、「出る杭は打たれる」覚悟で、わが道をつき進んで行って下さい。
みなさんも、詩集『おにいちゃんの紙飛行機』(銀の鈴社)を手にとって下さい。タイトルからは想像できない、いろんなものが詰まっていますよ。

                 ―この項 完―

なお、作品名や作品の一部の引用にあたっては、誤字・脱字等のないよう努めましたが、何かお気づきの点がありましたら、ぜひ、ご一報ください。

2017/2/25


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