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<<   作成日時 : 2017/03/13 10:41   >>

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詩集『ナンドデモ』を読む
          佐藤重男
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詩集『ナンドデモ』(海野 文音 ジュニア・ポエム双書260 銀の鈴社 2016.11)を読みました。29編の作品が収められています。
これまでたくさんの少年詩・童謡を読ませてもらっていますが、タイトルがカナだけ、という詩集ははじめてのことかも知れません。と、思ったのですが念のためリストをチェックしたところ、ほかに、五冊ありました。

『モンキーパズル』小黒恵子  銀の鈴社 ジュニアポエム双書40 1986.7
『パリパリサラダ』ちよはらまちこ 銀の鈴社 ジュニアポエム双書87 1993.7
『スクールゾーン』竹内紘子 らくだ出版 2005.3
『ラヴソング』石津ちひろ 理論社 2007.6
『クケンナガヤ』檜きみこ 私家版 2013.4

もちろん、このほかにも、わたしが目を通していない詩集がたくさんあることは言うまでもありません。
それはそれとして、詩集『ナンドデモ』に収められている作品を、いつものように、順に見ていくことにします。

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タイトルに採られている作品「ナンドデモ」は、「著者紹介」の欄に「ナンドデモ」が第3回「日本児童文学」投稿作品賞佳作入賞≠ニ紹介されています。
出だしの部分を引いてみます。

 ナンドデモ     海野文音

ツバメが横切る夏の空
モノトーンの小さな超音速機が
ナンニモナイ青に ナナメの線を
ナンボンも ナンボンも引いていく
青い空が パリパリ割れて 落ちてくる
ワタシの手と 地面に
             ―以下8行、略―

     詩集『ナンドデモ』(銀の鈴社 ジュニアポエム双書260 2016.11)より

何か、抽象画を見せられているようにも感じられ、不思議な作品ですが、それは、やはり、カナ表記がアクセントになっているからかも知れません。
こうしてみると、なるほど漢字は「表意文字」、カナ・ひらがなは「表音文字」であることがよくわかります。

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作品「一人桜」は、ファンタジー仕立ての一編です。「魔物が悪い空気を吐き出して」という一節をどう読み込むかで、だいぶ印象が違ってくるように思います。「おばあさんは 仮の住まいで祈っている」を直訳すると、福島第一原発事故からの避難に題材をとったものという読みも許されていいのではないでしょうか。
それから、ヒヨドリが「僕たちはなんともないのにね」というくだりがあるのですが、何かの比喩なのかどうか、判断がつきませんでした。「僕たち」とは、桜の木とヒヨドリのことですから、「自然は強い」ということなのか、それすら予断がつかない、という警告なのか、どうでしょうか。

 □
「暗闇の中」、かすかな香りを放って咲く小さな白い花に「なりたい」という、作品「存在」や、「ぼくのうしろにも/きっと/だれか いてくれる」という作品「守ってる」、そして、「夜 天ではゆめを織っています」ではじまり、「人々のねむりを/つつみはじめます」と語りかける、作品「ゆめ」なども、心の奥深くに届きました。
また、「友だちへの/「ごめんね」//片想いの「好きです」//父への「ありがとう」それら、「届けられなかった言葉たちは/どんな気持ちでいるのかな……」という、作品「どこへ」なども、心象風景を写し取ったものとして、しみじみ心に残ります。
その中から、作品「守ってる」の全文を引いてみます。

 守ってる     海野文音

あんず色の夕焼け雲が
やわらかに 輝いているのは
うしろに大きな夕陽があるから

心が
ほっとして
あったかくなって
今日あった いやなことも
どうでもいいやって
思えてくる

ぼくのうしろにも
きっと
だれか いてくれる

           詩集『ナンドデモ』銀の鈴社 ジュニアポエム双書260 2016.11


 □
「わたしの すこしの悲しみも/地球上の たくさんの悲しみも」「海に降る雪だったらいいのに」「太古に/命が生まれた海に/とけていくから」と詠う、作品「海に降る雪」は、この作者の詩作の原点ではないでしょうか。
悲しみも、やがては、母なる海=胎内へと帰り、そして再生される、という自然の営みへの確信がそこにはある、ということだろうと思わずにはいられません。
作品「蜘蛛の糸」は、日常から一気に非日常の世界へと場面が飛躍していく、その様がなかなかなかおもしろい「つくり」の作品で、好きです。
作品「空」は、子どもから大人へと成長する過程で、得たものと失ったもの、それを秤にかけてみたとき、さあ、どちらに傾くか、…
こうしてみると、わたしの「お気に入り」の作品は、「U 存在」、「V まぜる」に収められている作品が多いようです。
非日常に題材をとった、作品「夏のしっぽ」も、大好きな作品の一つですが、この作品も「U 存在」に収められています。

 □
詩集『ナンドデモ』を何度か読み返してみて、それぞれの作品を通して、自分の思いをどうしても伝えたいという作者の強い意志が感じられるのですが、それは、表題に『ナンドデモ』とあることに端的にあらわれているのでは、とあらためて感じています。
ぜひ、詩集『ナンドデモ』を手に取ってみて下さい。

               ―この項 完―
作品の引用などにあたっては、誤字・脱字などのないよう努めましたが、お気づきの点がありましたら、ぜひお知らせください。

2017.3.12


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