少年詩2010

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zoom RSS 解説書「少年詩の魅力」を読む

<<   作成日時 : 2017/07/10 11:25   >>

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『少年詩の魅力』を読む
         佐藤重男
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『少年詩の魅力』(海沼松世 てらいんく 2017.4)が出ました。
「まえがき」に、
【詩は難しい、また少年詩って何?と思っている方々や少年詩のことをもっと詳しく知りたいと思っている方に向けて書かれています】p2
とあるように、いわゆる「少年詩の入門書」としての役割を担って、【七つの内容で構成】されています。各章の見出しを掲げておきます。
 序章 詩とは何か  p7
 T章 少年詩とは  p11
 U章 詩の表現技法  p25
 V章 少年詩を読む  p37
 W章 少年詩を書いてみよう  p159
 X章 少年詩五○の基礎用語  p171
 Y章 いま読んでおきたい少年詩集  p189

ページ数をみてわかるように、V章 少年詩を読む、を詳述していることがわかります。

 □
「入門書」について、あれやこれや論評することはナンセンスかも知れません。
ですから、ここでは、「こんなことが書いてあるから、ぜひ読みましょう」といった紹介にとどめておくことにしましょう。
では、いくつかの特徴について述べていくことにします。
まず、「序章」で次のように言っていることに注目したいと思います。
【「詩とは何か? その定義はあなた自身が数多くのすぐれた詩を読み、味わい、その中から自分の考えによって作り上げていくものである。」一人の詩人の説にとらわれず、さまざまな詩集や解説書などを読みながら、あなた自身で詩の定義を築きあげてみてください。】p10

これは、「逃げを打っている」のでは決してなく、一つの見識を断定的に述べているのだ、とわたしは受けとめました。つまり、海沼の言う通りでいい、ということです。
文中、シェリー、ハズリット、オーデン、アーノルドなど、外国の詩人たちの「詩の定義」を、そして、高村光太郎、北村太郎、嶋岡晨、吉野弘など、日本の詩人たちのものも紹介されています。ぜひ、目を通してください。

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続いて、「少年詩とは」何か、を定義づけています。
【(正式には「少年少女詩」。)大人の詩人がこどものために書いた詩のことをいいます。一方、子どもが書いた詩は「児童詩」といい、明確に区別されます。】p12
これは、【有本芳水が最初に使用したといわれ】p12様々な論争を経て、現在定着している考え方です。(本ブログでも、何度も同様の説明をしてきたことです。)
その上で、海沼は、【A 児童詩 B 少年詩 C現代詩】p12の三つに分類し、作品を例示して具体的に解説しています。

 □
さて、いよいよ本論に入ります。
海沼は、「U章 詩の表現技法」の中で、次の五つについて例示し解説しています。
1. 比喩 A直喩 B隠喩 C活喩
2. 倒置法
3. 対句法
4. 反復法(リフレイン)
5. 声喩(擬声(音)語。擬態語)

そして、もっとも頁を割いて解説しているのが、「V章 少年詩を読む」です。
ここでは、【いくつかのテーマにそって読んで】p38いくことになり、それを次のように分類しています。
1. 事物詩
2. ことば遊び、ユーモア・ナンセンス詩
3. 自然・季節・風土を描いた詩
4. 方言詩
5. 幼年期・少年少女期を描いた詩
6. 命・生活をうたった詩
7. 視覚・聴覚の詩
8. 非日常・ファンタジーの詩
9. 戦争と平和への願いをよんだ詩
10. 愛をうたう詩

ここでも、具体的な作品をあげて解説してくれているのですが、引かれた作品の作者だけを挙げておくことにします。
1. ルナール、三好達治、まど・みちお、間中ケイ子、はたちよしこ、清水ひさし、杉本深由起、江口あけみ、日野生三、武鹿悦子、
2. 谷川俊太郎、石津ちひろ、阪田寛夫、岩佐敏子、
3. 鈴木敏史、のろ・さかん、小泉周二、田代しゅうじ、小林雅子、高橋忠治、木あきこ、
4. 宇部京子、江崎マス子、高野つる、小泉周二、山本なおこ、
5. いとうゆうこ、檜きみこ、海沼松世、永窪綾子、菊永謙、
6. 杉本深由起、内田麟太郎、工藤直子、山田今次、千代原真智子、高田敏子、小泉周二
7. 内田麟太郎、関根榮一、岩佐敏子、与田凖一、
8. 宇里直子、山中利子、海沼松世、大久保テイ子、高階杞一、
9. 川崎洋子、田代しゅうじ、えの ゆずる、島村木綿子、菊永謙、
10. 村瀬保子、高杉澄江、川崎洋子、立原えりか、西沢杏子、

それぞれ、どんな作品が紹介されているのか、ぜひ、確かめてみてください。一つだけ、注文があります。それは、「9.戦争と平和への願いをよんだ詩」の中で、尾上尚子『シオンがさいた』から作品が引用されていない、ということです。何か理由があるのでしょうね。
ところで、このようなテーマに沿った分類は、すでに『少年詩・童謡の現在』(菊永譲 吉田定一ほか てらいんく 2003.10)のなかで試みられています。こちらもぜひ手にしてみてください。

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続いて、「W 少年詩を書いてみよう」では、【少年詩を書く上で心がけておくことや注意しておくべきことを】、次のように整理してくれています。
1. よく観察する
2. 説明を省き、表現は簡潔に
3. 焦点を一つにしぼる
4. 推敲を忘れずに
5. 好きな詩人の作品を読もう

わたしは、このうち「説明を省き、表現は簡潔に」「好きな詩人の作品を読もう」に注目したいと思います。
これまでもブログのなかで、「少年詩は、平易なことばで簡潔に、そして鮮やかに表現する」ということを重ねていってきました。散文では、丁寧に書き込むことが大切ですが、詩は逆に、書いていないことを想像してもらうことが大事です。想像力を喚起する、そのためだけのことばで十分なのです。
また、「好きな詩人の作品を読む」ことは、すべての文学作品に当てはまる事は言うまでもありません。同時に、苦手意識を持つ詩人の作品を読む機会も持つことをお勧めします。そうすることで、間口の多さや敷居の高さを知ることになるだけではなく、自分の問題関心が何かを気付かせてくれることがあるからです。そういう意味では、他ジャンルの、特に、定型詩(短歌や俳句)を親しむ機会を意識的に持つ必要があるでしょう。

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さて、「X章 少年詩五○の基礎用語」「Y いま読んでおきたい少年詩集」の二つは、なかなかの苦労と労力を必要としたのでは、と察するに余りあります。
特に後者は、本文で引いた作品の「索引」も兼ねていて重宝されるものと思いますが、やや読みずらいかな、という印象を持ちました。

駆け足での紹介になりましたが、ぜひ、『少年詩の魅力』(海沼松世 てらいんく 2017.4)を手にしてください。
「宝の山」は、見ているだけではダメです。自分の足で登り、そこに散在している「お宝」の本質を見極め、そして、持ち帰ることです。
さあ、一緒に登りましょう。

          ―この項 完―

各種引用にあたっては、誤字・脱字などのないように努めましたが、何かお気づきの点がありましたらお知らせください。

2017.7.10



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