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<<   作成日時 : 2017/07/30 10:13   >>

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詩集『水の色は地球の色』を読む
         佐藤重男
 □
詩集『水の色は地球の色』(津崎優子 リトル・ガリバー社 1995.4)を読みました。
だいぶ前に「少年詩・童謡・詩論研究会」の仲間だった、故・小松静江さんから「ぜひ目を通して」と送っていただいたのに、本棚に仕舞い込んだままになっていたのでした。

 □
読み終えて、20年以上も前に出版された、という古さを感じさせるというより、むしろ、つい最近書かれたもの、といっても過言ではない、そんな印象を持ちました。
詩集『水の色は地球の色』は三つの章のうち、はじめの二つの章を、環境問題をテーマにしています。もっとも、「環境問題」という取り上げ方は正しくないかも知れません。著者は次のように書いています。

 「くるくる」というグループがあります。その名前は地球も命も資源も全てのものはくるくる回って循環するという意味をこめてつけました。ささやかながら環境問題について考えたり、できることから実践しようとしています。
 でも私たちに「問題」とか「とりくむ」ということばは似合いません。他の身近なことと同じような話題のひとつが「環境」なのです。p94「あとがき」出だし部分より

実際、収められている作品はどれも、すべてを「わがこと」として引き受け、ひたすら「問題の核心」と向かい合おう、という意志で貫かれています。
いわゆる、声を荒げての「告発」めいたものとは無縁でありながら、現状に対する「危機意識」が低重音となって流れていることに気づかされます。
作品「地球」の出だしは、こうです。

 地球     津崎優子

おまえは 病んでいる
ただれた表皮
声にならない うめき
膿み汚れた血管は
よどんだ体液を押し流しながら
腐臭を放つ

  ―以下、略―
        詩集『水の色は地球の色』(津崎優子 リトル・ガリバー社 1995.4)


 □
津崎は、こうも書きます。

 はしか     津崎優子

人間の環境破壊なんて
地球にとっちゃ
はしかのようなもの

          詩集『水の色は地球の色』(津崎優子 リトル・ガリバー社 1995.4)


ここにあるのは、決してペシミズム(悲観主義や厭世観、あるいはアイロニー=皮肉/反語)などではありません。問題関心をちょっぴり横にずらし、多分にユーモアすら感じさせる、そんなふうに読めます。

 □
この詩集の新しさは、地球環境の悪化に対して、真正面から向き合っていること、にもかかわらず、「誰が悪い」という「犯人探し」とは無縁で、『地球も命も資源も全てのものはくるくる回って循環』(前出)している、その問題意識を持って現実と対峙しようという強い意志に軸足をしっかり置いている、そのことにあるのではないでしょうか。
ある意味、社会性を持ちながら、そのように一般論としてしまうことで、自分も含めて「免罪」してしまうことになりはしないか、という今日的問題を強く感じるのです。
作品「地球のひとりごと」は、そのことを端的におしえてくれているのではないでしょうか。

 地球のひとりごと     津崎優子

地球を守れ なんて
余計なお世話だよ

守ってくれなくても
私は大丈夫
しずかで ゆたかな
もとの私に戻れるさ

人類が
滅び去ったあとで

         詩集『水の色は地球の色』(津崎優子 リトル・ガリバー社 1995.4)


皮肉でもなんでもない、環境問題への取り組みの本質、それが問われていることを十分に承知したうえでのことばなのだ、と思います。

 □
U章に収められている、作品「ゴミってなぁに」は、環境問題への関わり合いについて、実は、『他の身近なことと同じような話題のひとつが「環境」』(前出)問題、ではないか、だから、もっと肩の力を抜いて、自分たちの日常に目を向けてみよう、そうすると、いろんな事に気付き、発想の転換を導いてくれるよ、と言っているのです。作品「それもこれも自然の一部」を見てみましょう。

 それもこれも自然の一部     津崎優子

かぼちゃの煮物をつくって
タネと
ヘタと
ワタを
土に埋めた

雨上がり
土を押し上げ
一斉に芽を出して
やがて
黄色いメ花とオ花が
結ばれてできた実で

かぼちゃの煮物をつくって
タネと
ヘタと
ワタを
土に埋めた

         詩集『水の色は地球の色』(津崎優子 リトル・ガリバー社 1995.4)


おそらく、「普通なら」、かぼちゃのタネとヘタとワタは、ゴミとして捨てられるものです。しかし、津崎は、それを土に戻し、そして、丹精を込めて育てて、実になったそれを再び「かぼちゃの煮物」にしておいしくいただき、そして、また…。
「命の循環」が、日常のなかの日常ともいえる家事のなかで詠われている、津崎の思いがよく伝わってくる作品の一つです。

 □
詩集『水の色は地球の色』は、肩ひじを張らない、その語り口は素朴ささえ感じさせます。時には、やわらかな口調で辛口の「訴え」とも読める作品もないではありませんが、一貫して、日常から離れずにいたい、そんな津崎の思いが伝わってきます。
そして、作品「オアシス」では、「ザラザラと/どこまでも/果てしない 熱い砂」が続くように思えたとしても、「いつか 私の足跡に/きっと 水がたまるだろう/そこから小さな/緑が 芽ぶくだろう」と、地球の将来への熱いメッセージ(希望)が読み取れます。「ザラザラ」と「芽ぶく」の対比が強く印象に残り、わたしたちを鼓舞してくれさえします。
V章に収められている作品たちもまた、熱い想いに溢れていて、地球環境問題のこれからを示唆している、そんな共感さえ覚えます。
駆け足での寸評になってしまいしまた。また、津崎が採って欲しいと願っている作品を読み落としてしまったかも知れません。
未読の方は、ぜひ、詩集『水の色は地球の色』(津崎優子 リトル・ガリバー社 1995.4)を手に取ってみてください。

        ―この項 完―

いつものことですが、作品の引用にあたっては、誤字・脱字などのないように努めましたが、何かお気づきの点がありましたら、ぜひ、お知らせください。
なお、著者・出版社には、作品の引用について、ハガキでお知らせしました。事後承諾の形になりましたが、出典先などを明示してあることで、お許し願えれば幸いです。


2017.7.30


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